2000年のトム・ハンクス主演のアメリカ映画「キャスト・アウェイ」を紹介させてください。
この映画は、1994年の『フォレスト・ガンプ/一期一会』以来、ロバート・ゼメキス監督とトム・ハンクスが組んだ2作目となります。
無人島に流れ着いてしまった男の4年間にも及ぶサバイバルを描いた映画です。
主役のトム・ハンクスは、無人島での厳しい食生活で痩せてしまう主人公を演じるために22.7kgも減量したのだそうです。
彼はこの入魂の演技により、第58回ゴールデングローブ賞では主演男優賞(ドラマ部門)を受賞し、第73回アカデミー賞でも主演男優賞にノミネートされましたが、惜しくも受賞は逃しました。
トム・ハンクス演ずるチャック・ノーランドは、有名な物流会社FedEx(フェデックス)のシステムエンジニアです。
物流効率向上のために世界中を飛び回るチャックですが、彼にはテネシー州のメンフィスに長年付き合っており結婚も意識するケリー(ヘレン・ハント)がいます。
クリスマスパーティーの最中にマレーシアでのトラブル解決のために呼び出されてしまったチャックは、空港での別れ際に、大晦日には戻って必ず一緒に過ごからと約束して旅立ちます。
ところが、チャックの乗った貨物機は悪天候で太平洋に墜落しまいます。
なんとか救命ボートにしがみ付いて嵐に耐えたチャックは、とある無人島に漂着します。
島には動物は皆無で、ただココヤシが生えているだけです。島の近くを通る船もありませんでした。
この島は浜から数百メートル離れた沖を高波に囲まれていて、チャックは一度救命ボートで脱出を試み
ますが、高波にはあえなくひっくり返されてしまいます
ここで長期のサバイバルを覚悟したチャックは、回収していた積荷を、天使の羽根のロゴが描かれた箱だけは除いて開封します。
天使の羽根のロゴの箱は、チャックにとって、いつか必ず帰ることができるという希望のシンボルだったからです。
開封した荷物を使って食料の確保をはかります。
しかし、とにかく火を熾すことが絶対必要だと考え、火を熾すことを試みるのですが、なかなか火は熾きず、手のひらに怪我を負ってしまいます。
自棄になったチャックは積荷の中にあったウィルソン製のバレーボールを放り投げます。
そのバレーボールに付いた血が人の顔のように見えたチャックは目や口を書き込み、これ以降「ウィルソン」と名付けて話し相手にするようになります。
この「ウィルソン」はチャックにとって島での唯一の話し相手としてやがてなくてはならない存在になっていきます。
やがて火を熾すことができ、食料の確保にも成功します。
そして時が流れます。映画では4年後が描かれます。
チャックは離れた場所から銛で魚を仕留められるほどに、島での生存に適応しています。
この4年の間に自殺も考えたチャックですが、唯一の話し相手である「ウィルソン」の存在と、ケリーへの思いだけを支えに生きてきたのです。
やがて、流れ着いた仮設トイレを改造して帆をもった筏を作れば、越えられなかった高波を越えられるのではないかと思いつきます。
準備と整えたチャックは、いよいよ脱出の日、潮や風が沖向きに変わったタイミングを逃さず、脱出を決行します。
荷物は親友「ウィルソン」と、唯一開封しなかった天使の羽根のロゴの箱です。
そして、何とか高波を乗り越えることに成功、ついに島を脱出します。
しかし広大な太平洋の真ん中で、何日漂流しても船に遭遇する気配はありません。
やがて激しい嵐に帆が飛ばされて、壊れた筏から親友の「ウィルソン」まで流されてしまいます。
チャックは何とか親友の「ウィルソン」の救出を試みますが空しく流れて行ってしまいます。
親友「ウィルソン」を失って子供のように泣きじゃくるチャック。
このシーンでは、私たち観客も彼と一緒になって深く心を痛めざるを得ません。
希望を失って漂流し、筏の上に倒れてただ死を待つ状態だったチャックを、通りがかった貨物船が偶然発見します。
こうして、チャックは無事に帰国するのですが、果してケリーと再会できるのでしょうか。
ケリーはチャックを待っていてくれたでしょうか。
ここは映画でぜひご覧になってください。
(ここからのストーリー展開は省きますね)
最後にラストシーンを紹介させてください。
映画のラストで十字路に立って行き先を決めかねていたチャックに、通りがかった素敵な笑顔の女性(ラリ・ホワイト)が道案内をしてくれます。
そして、走り去る女性のトラックを見るとあの幸運の箱と同じ天使の羽が、車の後部に描かれていることに気付きます。
一人になったチャックはもう一度十字路のそれぞれの方向を見て、最後に女性の車が走り去った方向を見て穏やかに微笑みます。
このトム・ハンクスの微笑みがすごくチャーミングなんです。
そして、映画をここまで見てきた方には彼のチャーミングな微笑みの意味がわかります。
チャックが過酷な4年間を生き抜いたことを観客も知っているだけに、観客はこのラストシーンの彼のチャーミングな微笑みに、思わず一緒に微笑まざるを得ません。
なかなか素晴らしいラストシーンでした。
未見の方は是非ご覧になってください。
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